アジアフォーカス・福岡映画祭'99の感想

この映画祭は、すべての会場ではありませんが、監督が来場して質疑応答がある場合もありますので、監督来場の作品を見た日には、その様子もレポートしたいと思います。(だいたい、どこの場所でも積極的に質問していくつもりの私です。せっかくの機会ですものね!!)


9月19日(日) 「ナイルの娘」(大丸・エルガーラホール)

映画の感想】「ホウ・シャオシェン監督レトロ・スペクティブ1980-87」最終日。タイトルにもなった主人公が読む漫画「ナイルの娘」は、日本の細川千栄子の漫画「王家の紋章」の海賊版だそうです。これは1987年の映画なので、ぐっと現代的で、パンフにも書いてある通り、後の作品「憂鬱な楽園」の先駆けという感じ。若者の孤独感とか閉塞感に、なんだか胸がつまりそうな切ない映画でした。
 まぁ、いろいろと思うところもあったけど、やはり、ホウ・シャオシェンのビデオ化されていない(ですよね?!多分。)初期作品が一挙に続けて観ることが出来たのは、作風が変わっていく様が、よくわかった、良かったです。


9月17日(金) 「風が踊る」 (大丸・エルガーラホール)

映画の感想】「ホウ・シャオシェン監督レトロ・スペクティブ1980-87」第三日。この作品も、昨日の作品と同じような雰囲気の作品。この次に制作された『川の流れに草は青々』までは、この「屈託のない明るい青春コメディー」という感じだったのに、私が一日目で見た映画『坊やの人形』以降、ちょっと作風が変わったようですね、この監督。明後日観る予定の作品『ナイルの娘』は、この『坊やの人形』以降、更に『フンクイの少年』『冬冬の夏休み』『童年往事〜時の流れ』『恋恋風塵』(この辺は、懐かしくて感傷的な作品、という感じ。私は好きです。)を撮った後、そして、あの『非情城市』(これは好きな作品だけど、話としては辛いですね)の前の作品です。うーん、また、ちょっと辛い映画かもしれないなぁ。でも観る機会ないから、頑張って見に行くつもり。

同日「ミステリー・オブ・ザ・キューブ」 (大丸・エルガーラホール) 

映画の感想】今回の映画祭では、初めて「同じ作品を二度」観てしまった。いや〜、これ面白かったんだもん。日韓間の歴史の背景とかを考えれば、軽率に面白がってはいけない気もするけれど、でも、この作品は、二度観てもドキドキするエンターテイメントでしたよ!!

同日「悪女列傳」 (大丸・エルガーラホール) 

映画の感想これは台湾の若手監督三人によるオムニバス三作品。資料によると、台湾では若手監督のにチャンスを与えるという意味あいで、こういう「オムニバス型式」の映画が撮られることは多いらしい。悪女といっても、日本のそれとは、ちょっと意味合いが違うようで(?!)、そんなにも悪女の話ではなかったですねぇ。どの作品も若い女性の孤独感とかが根底に描かれている感じで、見応えありました。私は第三話に登場したCDショップ勤務の男の子が好みっ!!


9月16日(木) 「ステキな彼女」 (大丸・エルガーラホール)

映画の感想】「ホウ・シャオシェン監督レトロ・スペクティブ1980-87」の、第二日。昨日の作品が私の好みではなかったので、今日はどうしようかなと悩みつつ行ったのですが.....驚くほどわかりやすいラブ・コメディーでした。資料を読むと、これがデビュー作らしい。うーん、そういえばTVか何かで観た、やはり初期の作品『川の流れに草は青々』も同じくケニー・ビー主演で、こんな感じのコメディーだったことを思い出しました。うーん、どこが境目で、今の作風に移行したのだろう???ところで、ケニー・ビーって、「モ〜ニン、モーニン、君の朝だよ♪」って歌っていた岸田智史を思い出す風貌だなー。制作年が1980年だから、これって(服装とかが)、あの当時の最新流行だったんだー、そう言えば。その時の“最新流行”のものほど、後の時代に見ると、なんか「苦笑い度」高いな〜と改めて思いました。あ、映画は、とても良かったですよ!! 

同日 「スパイシー・ラブスープ」(ソラリアシネマ1)

映画の感想】これは、この秋に福岡でも映画館での一般公開が決まっているけれど、予告編がすごく面白そうで、我慢できずに今日観ました。そしたら....やっぱり、すんごく面白かった!!5話のオムニバスで、私は最初の話(声にまつわる話)と第4話(子供が料理する話)が、一番好きだったなー。
 私は来週、東京に遊びに行くので、それに備えて「ぴあ」で上映中映画のチェックをしていたら、この『スパイシー・ラブスープ』東京では10月から公開みたいです。東京方面の方々で、ここを見ているかた、楽しみですね!!


9月15日(水・祝日) 「坊やの人形」他 (大丸・エルガーラホール)

映画の感想】今日から5日間は、一日一作品のペースで「ホウ・シャオシェン監督レトロ・スペクティブ1980-87」ということで、台湾のホウ・シャオシェン監督の初期作品が上映されます。私は好きな監督なので、一応全部観るつもりなのですが、うーん、今日の作品は...ちょっと個人的には辛かった。オムニバスで、他2作品は他の監督作品だったのですが、ううーん、まぁ、なかなか観る機会がない作品だったし、一回きりの上映だったからなぁ.....。そうそう、ミニコミ仲間の「平成ボヘミアン」の方々が、ホウ・シャオシェン特集号を臨時でつくって、入り口で配布していました。すごいなぁ!!うーん、そういや私も、そろそろペーパー版ミーハー通信の今月号作らないと。

同日 「ミステリー・オブ・ザ・キューブ」 (ソラリアシネマ1)

映画の感想】私が今回観たいと思った作品は、ガイドブックを読んで娯楽性の高そうなものなのですが、これは、ミステリー、ホラー、サスペンスが盛り込まれた、すごいエンターテイメント作品でした。出だしは、インターネットのチャットで知り合った若者たちが、現存した詩人イ・サンの意味深い詩を読み解くという現代的な導入で、後半は過去の歴史にさかのぼっていき、『インディジョーンズ』も真っ青の大スペクタクル!!ただ、昔の冷戦時代の米国VSソ連のような感じで、大日本帝国という形で日本が「敵」という筋立てになっていることに反発を覚える観客の人もいたようで、うーん、その辺は難しいですね。今日も、実際「こんな映画は嫌いだ!」と言って途中で退席したお客さんも居たらしいです。私は、すごく楽しめた作品だったんですけど.....。質疑応答で「この映画のどこが面白いんだ」てなこと言ったお客さんもいたらしい。うーん。はるばる外国からやってきた監督さんに、そりゃないだろうと思ったのは私だけ?

監督との質疑応答より抜粋】Q:「この映画を撮ったことで、大日本帝国の呪いはとけましたか?(笑)」これは佐藤忠男氏の質問で、もちろん冗談まじりの質問。

A:「自分は、そのようなことは気にしない質なので、それはわかりません。」(この問いに対する答え、というのではない感じでしたが、監督が言われたこと。)「この映画は、ストーリー的に、最も“映画祭向けではない映画”だと思っていたのに....もちろん日本の方々にどういった形で受け入れられるのか大変興味はありましたし、観て欲しいと思っていましたが....今回の映画祭に選んでもらえて、大変驚きましたし、嬉しいです。佐藤先生には、とても感謝しています。」

Q:「テギョンを演じた女優さんが、泥まみれの演技も厭わない体当たりの演技で、驚いたのですが、あの女優さんは、韓国ではすでに人気の女優さんなのですか?それとも新人の方ですか?」

A:「あの女優さんはシン・ウンギョンさんという方で、2年前に飲酒運転で捕まってしまって、しばらく活動していなかったのですが、最近復活して、この映画が2本目です。次の作品は日本の『リング』の韓国リメイク版です。今はTV番組の司会者として人気が高い人で、その番組は韓国のオリジナルだと思っていたら、今回の来日で日本のTV番組を見て、そっくりの番組をやっていたので、ガッカリしました(笑)。」

Q:「映画の後半は、なんだか『インディジョーンズ』をほうふつとさせたのですが、やはり影響を受けた部分はおありでしょうか?」

A:「はい、私は『インディジョーンズ』は大好きな映画で、50回くらいは観ていると思いますので、知らず知らずのうちに、いろんな場面に反映されているかもしれません。私の名前はユ・サンオクという(韓国の)名前と別に、英語名のジョナサン・ユーという名前もありますが、それは、いずれ機会があればハリウッドに進出したいと思っているからです。」

 パンフレットを見ると、1964年生まれの若い監督さんで、あー、新しい世代の韓国映画を担う人なのだなぁという感じ。いい意味での野心にあふれているというか、やる気満々というか。次回作は、『13日の金曜日』の特殊メイクを担当した人と一緒に仕事をするとのことでした。実は二重三重の構造で、なかなか凝った話だったので、もう一回じっくり観たいなーと思った私でした。

 質疑応答が終わった後、写真を一緒に撮ってもらったのですが、質問した者だと覚えておられたようで“ああー、さっきの!!”てな感じで、とてもにこやかに応対してもらえたのが印象的なジョナサン・ユー監督でしたっ!!


9月14日(火) 「カラー・オブ・パラダイス」 (ソラリアシネマ1)

映画の感想】福岡では、今、ちょうどKBCシネマで上映中の『運動靴と赤い金魚』のマジド・マジディ監督の最新作。実は『運動靴...』も、97年の福岡映画祭で上映されたいたとのこと。(そのときの公開題は『天使のような子どもたち』)うーん、知らなかった。昨年の『八月のクリスマス』といい、侮れないな福岡映画祭!!という感じで、すごい名作が先取りで見られる映画祭だったのね。今更ながら、ちょっと認識を新たにした私です。さて、この作品も『運動靴...』と同様、父と子の話ですが、前作よりちょっとヘビーです。それは、目の不自由な息子と、それを疎ましく思っているらしい(自分の再婚や将来にさしさわりが出てくると思って)父との話が軸になっているからです。昨今の日本でも、母親が保険金の為に実の息子を殺したりしているし、もう私はドキドキで話の展開を見守りました。でも、ご心配なく。ネタバレになるので、あんまり書けないけど、辛いエンディングではありませんよ、とだけ書いておきましょう。家族愛や障害者との日常生活について、いろいろと考えさせられる映画でした。と言っても、決して辛気くさい映画ではなくて、村の自然の美しさはとてもカラフルだし、前作同様、子供たちの演技が素晴らしいです。そして、すごく胸をうつ台詞が、いっぱい出てきます。これは、きっと一般公開になるでしょうね。いい作品ですもの。ちなみに、最新ニュースとして、この作品がモントリオール国際映画祭でグランプリを受賞したとか、今日の舞台で、佐藤忠男氏が言われていました!!

監督との質疑応答より抜粋

Q:「目が不自由でない子供に演技をつけるのも大変でしょうに、目が不自由な子供に、どうやって演技指導をされたのでしょうか?台詞などは、口述で教えたのですか?」

A:「子供は、前作でも素人の子供を使っていたので、そんなに苦労はしませんでした。この映画の主役の少年(実際に目が見えない子なのです)とは、撮影の前に1年くらい一緒に旅をして、その間に自分の中では映画が出来ていた。この映画の台詞は、どれもほとんど、この少年が旅で実際に口にしたことなので、あらかじめリハーサルをしてから映画を撮ったようなものなのです。そういう意味では、この脚本は、この少年と共に作ったようなものなのです。いろいろと困難な事もありましたが、この少年となら出来ると自分にはわかっていたので、(映画がちゃんと完成出来ることを?)信じていました。」

Q: 「監督は、前作でもハッピーエンドになるらしいという場面で終わりましたが、全部を観客に見せるというのではなく、ハッピーエンドを示唆する感じで終わりましたね。今回の作品でもそうでした。ハリウッドの映画とかだと、ハッキリとハッピーエンドを見せる終わり方をするでしょうが、監督には、そうしない意図が、おありなのですか?」
A:「そうですね。ハッピーエンドでない終わり方はいやなので、ほんのりとハッピーエンドを思わせる、少し甘い感じを残すようなエンディングにしています。それは、すごく甘いと飽きてしまうでしょう?!それと、映画館を出たらもう映画のことは終わり、というのではなくて、映画館を出ても心の中に余韻を残してあれこれと考えて欲しいから、私は、あのような終わり方にします。」

 マジド・マジティ監督は、すごくサービス精神旺盛な方らしく、1の質問に10答えるとい感じの、すごく丁寧な質疑応答となりました。自然と、時間が(多分予定よりずいぶん)オーバー気味になり、最後には「実は、この会場の後ろの、あの辺に私の息子も来ているのですが、“お父さん、もう終わりにして”と合図しているので、もう終わっていいですか?(笑)」という監督の一言で、締めとなりました。帰る時に、ちらっと息子さんを見たら、『運動靴と赤い金魚』のアリ少年くらいの年格好で、目がくりんとしたお利口そうな坊やでした。
 さて、帰り際に、ミーハーな私は、もちろんツーショット写真を撮りました。通訳の女性にシャッターを押してもらい、なにやらイラン語で監督に声をかけて、サイン中の監督の顔を少しだけあげさせて(笑)くれました。通訳の女性、「チョット、ダマシタヨ〜(笑)」と言われていましたが、一体何と言われたのやら????

 

同日 「玻璃の城」(ソラリアシネマ1)

映画の感想】このタイトル、何て読むの?!と思っていた私。入場前の行列整理で、スタッフの人が「『ガラスのシロ』をご覧になる方、最後尾はこちらです!!」と言うのを聞いて、初めて知りました。そう、この映画は人気俳優レオン・ライが主演のせいか、よその福岡の映画関連のHPでも「11日(土)の『玻璃の城』は満員で入れなかった」とか書いてあったので、平日の今日をねらって私は見に行ったのでした。正解でした。平日でも、この人の多さ!!次は、この作品は、もう18日(土)しか上映がないので、どうしても見たい方は、早めに会場に行くことをおすすめします。
 さて、この映画は、私は見ていないけど『宋家の三姉妹』のメイベル・チャン監督の最新作。レオン・ライとスー・チー二人の恋愛話に、それぞれの子供たちの話も絡んできて、その軸には、学生運動が続く70年代から香港返還の97年までの20年間の歴史がある、というドラマチックな映画です。最初、レオン・ライの子供たちが、もう大学生くらいという設定で「ええっ?!そんなに年じゃないでしょうに、レオン・ライは。(実年齢は、いくつなのか私は知りませんけど。いくつ?!この人。)ちょっと無理があるんじゃないの?」と思いましたが、大学生から40代のビジネスマンまでを演じたレオン・ライを見ると、いやはや、やはり大学生時代は、ちょっと若づくりに、いささか無理が感じられましたね(苦笑)。共演のスー・チーは、私は未見ですが『夢翻る人〜色情男女〜』で体当たり演技で主役を演じた人らしい。日本の喜多島舞に、ちょっと似た感じの女優さん。こちらは実年齢22歳ということなのに、難なく20代から40代までを演じきっておりました。香港映画って、なんかオールディーズがキーワード的な使われ方(それも、すごく上手い使い方)をされるけど、この映画もまたしかり。ブラザーズ・フォーの『Try to Remember』が、随所に出てくるのですが、ぐっときます。NY、香港、ロンドンを股に掛けた20年間の二人の恋愛ストーリーは、女性受けしそうですね。

TOPページに戻る